みなさんは コダックのフイルムカメラは?と言われて
どんなカメラを想像するでしょうか
インスタグラムの名称の元にもなった
インスタマチックカメラでしょうか?
今日紹介するヴォレンダは
アメリカコダックではなくて
ドイツコダックから1930年代に発売された小さなカメラです
その前に
ナーゲルとコダックのことを少し
ドイツコダックのDr、ナーゲルについて すこしふれておきます
この方は 1920年に成立した コンテッサ・ネッテルという
カメラメーカーの代表技術者でした
1920年代中ごろ ドイツではきびしい不況の中
中堅のカメラメーカーが 生き残りをかけて 大同合併
その結果 ツアイス・イコンが誕生しますが
合併の流れの中 Dr,ナーゲルは 合併を良しとせず
ナーゲル社を立ち上げて 独立の道をえらびました
アメリカのイーストマン・コダックは Dr,ナーゲルの高い技術力に注目し
資本参加することで ナーゲル社を傘下に置くことになりました
手元にあるヴォレンダ
レンズの銘板に こう しるされています
Kodak A.G. Dr. Nagel-Werk Stuttgart Germany
( Werk はドイツ語で 英語の Work に当たります )
傘下に収めたとはいえ コダックの
Dr,ナーゲルに対する 国境を越えた尊敬の気持ちが伝わってきます
そして Dr,ナーゲルはコダックの期待に応え
35mmフイルムカメラのベストセラーにして名機の
レチナを開発します
さてヴォレンダ
この機種は ナーゲル社時代に始まりコダックになってもつくられました
発売は1931年 そして1937年までつづきました
ヴォレンダと呼ばれるカメラ
127ベスト判フイルムを使う機種
半分サイズの ベスト半裁判を使う機種
620フイルムといって
現在の120ブローニーフイルムよりわずかに小さいフイルムを使う機種など
いくつかあったそうです
私のヴォレンダは ヴォレンダ48と呼ばれ
ベスト半裁判(はんさいばん)の機種で
最上位機に ピピュレ その廉価版 ランカ ww(笑)
そして 普及型の ヴォレンダ
ナーゲル社の ベスト半裁判カメラとしては もっとも安価な機種になります
おもしろいのは レンズボードは ランカ用とおもわれるパーツが使用されて
なんと セルフタイマーまで 装備されていて
ウェブ上で見られる 多くのヴォレンダには無い特徴をもっていて
ナーゲルのロゴも コダックのロゴも入っていない
過渡期の製品とおもわれます
ここからが本題です
ヴォレンダに 35㎜フイルムを詰めて お手軽カメラに?
127ベスト判フイルムを使うカメラは
何台か使ってきましたが
127フイルムのスプールは 軸が細すぎて
裏紙の無いフイルムを使うのには向いていません
フイルムがバネのように働いて 未撮影のフイルムを
不規則に巻き上げてしまいます
35mmフイルムを使うには
個体ごとに 専用スプールを用意する必要があります
127フイルム ベスト判カメラは 機種ごとのフイルム室のサイズがまちまちで
これには合うけど こちらには きついとか
入るけど外せない とか
ゆるいスプールだと
フイルムが 不規則に巻き上がったり
フイルムトラブルになります
ゆる過ぎず きつ過ぎず
一台ごと 現物合わせで作ります
ほかの記事でも 作り方 紹介しましたが
改めて記事にしたいとおもいます
フジのパトローネをばらします ( コダックは 使いません )
フイルムを止める返しが軸にあるので フジのスプールを使います
本来は ごらんのようなフイルムエンドですが
同じようにしなくても良い方法を 紹介します
スプールを 加工します
対称になるように 長い方を切り落とします
平らに 削ります
ケガキます つばの径が大きいので カメラに合わせて小さくします
元のサイズと 削った後
軸になる部分を 作ります
ホームセンターで 手に入る 9mmのラミンの丸棒
縦にノコを入れて やすりで削ります
とりあえずって感じで 丸棒4本削りあがりました
丸棒は スプールに合わせ 溝を深く と 溝を浅く 2種類あります
差し込んで 相性の良い同志 ( しっかり止まる ) 合わせて
2液性エポキシ接着剤で 接着します ( 付けすぎですが )
長いので 使用するカメラの フイルム室に合わせて左右そろえます
4mmのアルミパイプを差し込む前に 先端をとがらせておきます
ラミンの棒に4mm穴 とがらせた4mmアルミパイプ
なるべく センターに揃うように
4本できました
収まりの良い同志 合わせます
エポキシ接着剤で 固定して 長さもそろえました
巻き上げ軸になるところには パイプに溝を切ります
ボレンダに収めてみて
きつすぎないか 取り外しはスムースにできるか 指で回してみて 調整します
左の上が 巻き上げノブ
さて 肝心なフイルムです
出来上がったスプールにあわせて フイルムエンドを 細工します
パーフォレーション7個でカット
右から1センチ 左から1センチで縦に切れ込みを入れ
パーフォレーション3個のところで(左側は2個)上のようにカット
ラピッドマガジンの お出まし~
これも 貴重といえば貴重ではあるので
持ってない方が多い?と思います とはいえ
127フイルムのカメラに135mmフイルムを装てんする時 役に立ちます
ダークバッグの中で 先を細工した 24枚撮りフイルムを半分
ラピッドマガジンに 送り込んでから
ダークバッグから取り出して 同じように カ~ット
ラピッドマガジンから出ている部分も ハサミで同じように細工します
先端2mm位のところを 折り曲げます ( わかりやすいように白い紙を下にしました )
こちら側から フイルムを差し込みます
反対側から見たところ 返しがあるのがわかるでしょうか
コダックには これが無いんですよ
っていうか これもコスト掛かってますよね フジフイルムさん ありがとうございます
これも 白い紙で 見やすく再現してみました
折り返しておいて 差し込みます
折り曲げた側を 返しがある方にして いっぱいに差し込んだら
ゆっくり引いてやると 返しに止まります
片方の返しにしか 掛からない時があるので掛からない時
何度か トライして しっかり止まるのを確認します
ちょっと わかりにくくて スミマセン
ここからダークバッグに
カメラも入れて 作ったスプールに一度 全部巻き取って
反対側も同じように フイルムの端を スプールに固定します
この状態になったら カメラにセットして裏蓋を閉めて
撮影スタートです
機種によって巻き上げノブの場所がちがうので よ~く考えて
フイルムのセット方法を決めます
( ノブが右だったり 左だったり 上だったり 下だったり
フイルム送りが 右から左 その反対 カメラによっていろいろです )
あ ! 大切なこと忘れてました
元々 裏紙付きフイルム機なので 裏蓋にのぞき穴があるので
今回は 120ブローニーフイルムの裏紙でふさぎます
圧板のすき間に合わせて カットして両面テープをなるべく少なく
裏紙両端に貼って 裏蓋に貼ります ( はがすときのことも考えて )
赤窓を ブローニーの裏紙でふさぎます
こんな感じ
圧板の 塗装が剥げていて 良く使われていたカメラなのが判ります
これで 35㎜フイルムを使っても大丈夫!
ボレンダ 安く入手できたのには 訳が
このボレンダ
東京都内の フイルムビンテージカメラ界隈では まあまあ知られたショップ
そこが 時々オークションに出品した中から
いつもはほとんど 競り負けてばかりが なぜか
安価に落札出来たカメラです
安かったのは もちろん理由があって
前蓋のツメが折れて フタが閉まらない状態でした
出品の時の写真でも ゴムバンドで止めた状態が写っていました
もし 修理に出したら 本体より高くなりそうで
入札を 控えた方が 多かったのでしょうか
カメラ修理を愉しめるなら こういう選択も
( 修理は 試行錯誤でしたが )
私的に ありです
フイルム入れて 先ずは撮影を愉しんでる間に
修理の準備!
レンズのカバー( ふた )全体を作り直すのは大変なので
爪の部分だけ作ります
材料は 違う金属を使うと 腐食の原因になるので
100均で手に入る 鉄のクリップを 曲げて削って
最後にネジか カシメで取り付けようと思います
小さな部品になるので 加工がたいへんです
何個も作っては 合わせて 最適な大きさを探ります
取り付け部分には 力がかかるので 強度も必要です
分解したカメラから 取り出したネジ ガスコンロで加熱して
ゆっくり冷まして 焼きなましを しておきます
ハンドバイスで 力いっぱい挟んで カシメます
+ - ネジですが カシメた後 頭を削ってしまうので大丈夫
同じ ネジなら なお 問題ありませんが
ガタが無いように カシメられれば OK
ついでに あちこち 塗装が剥げてきているので 塗り直し しました
わかりにくいですが 前蓋の内側に 名前が彫られていたのか
削り取られた痕も 塗り直しておかなくては
ファインダーを外します
貼り革も 丁寧に 剝がしていきます
90年前の 接着剤は 膠(にかわ)でしょうか
接着剤は パリパリでした
彫刻刀で 丁寧に 削っていきます
本革が使われていました 凄い!
ダイソーの100円ラッカー塗料 スプレーですが
ガラス瓶に必要なだけ取って 使いました
薄め液は アサヒペン(タックスではありません)
ダイソーの アクリル用の平筆 8番で
上の貼革は 外せなかったので 浮かせて まわりを塗ります
貼革で隠れてしまうところは 塗らなくてもよかったけど
どのくらいの仕上がりで 塗れるか 試してみました
描くように塗ると ムラになりやすく
点で おいていくように 塗ると
きれいに塗れるようです
蓋のツメは 塗ってしまえば 目立たなくなりました
しろうとにしては まあまあでしょうか
本来は 下地の塗料を塗ってから 上塗りをしてやらないと
はがれやすくなるので 今回の方法は あくまで自分用です
貼革は さすがに にかわは 使えないので 両面テープで
耐久性は にかわ90年 両面テープで10年位 でしょうか ( ´ー`)フゥー...
いいんでしょうか いいえ 接着剤で 貼るべきですね
あくまで 自分用です スキルを上げて 貼りなおしたいと思います
ここは 本体に少しずつ 貼っていきました
なるべく 溶剤を少なく使うには
100均スポイトで 瓶に取った塗料を 少しずつ薄めたり
筆を洗う時は スポイトで染ませて
ティッシュペーパーで拭く
これを繰り返して 清掃をしました
そうすることで 溶剤の使用料を 減らすことができます
ナーゲル ヴォレンダ48 まとめ
Konirette コニレッテ との ツーショット
コニレッテは ベビーイコンタに範をとった
ベビーパールのリメイクだと思ったら ボレンダそっくりでした
ベビーパールを元に ヴォレンダに範をとったのでしょう
* *
昨年 鎌倉に行った際に 大仏をバックに撮りました
770年前の 大仏と 90年前のヴォレンダ
ちょっと 似て ないか~ ?
先の大戦を生き延びたカメラと 津波や戦争 災害をみていたであろう大仏
疫病の治まりが 見えない今を
撮っていくのに ヴォレンダ 相応しいカメラではないでしょうか
ここからは ヴォレンダで撮影した絵になります
わざわざ35mmフイルムを使って
普段使いするには いろいろハードルは高いけど
人と被らないカメラを使ってみたい方に
注目してほしいカメラです
ナーゲル・コダックの小さなカメラでは
ピピュレが有名ですが コレクターアイテムになっていて
気軽に入手するには たいへん高価です
ヴォレンダは なかなかお目にかからない割には
安く手に入ります
127ベスト判フイルムも まだ入手できるので
ベビーパールやベビーイコンタを使ってみたい方
候補の一台にに加えてみてはいかがでしょうか
長々と 読んで頂いて
ありがとうございました
楢崎のでした
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