むかしむかし あるところに
とりたてて お金も才能もない ふつうの男がおりました
男は 10年以上務めた職場から ひとり独立し
二間の アパートで仕事をはじめました
男の仕事は 錺職人
「 必殺仕事人の 秀さん 」 です
高価な宝石を預かったりする仕事なので
部屋をあまり開けられないので 仕事の切れ目での楽しみのひとつに
近くの新井薬師の蚤の市がありました
お金はあまりなかったので たいがいは ひやかしに歩くことがほとんどでした
或る日 とんぼ玉をひとつ手に入れました
あと 短い軸の 万年筆
手に取ると 知っている文字と 刻印
MADE IN USA と打たれている
キャップのポケットに掛けるクリップは 見慣れた矢羽根のモチーフはなく
PA R KER の文字に なぜか先端に羽根を模った模様
心惹かれたけど 小ぶりの軸とちょっと貧相な装飾に PARKER の銘
値段をきけば 500円
もしかしたら いい買い物かもしれない
値段なりだとしても 500えん
安物でも かまわない
当時は 今のように簡単に由緒を調べることはできなかったし
500円の万年筆に由緒来歴があるなどとは考えもしません
しばらく 愛用の筆記具として 活躍の日が続きました
やがて 仕事を辞めたり 引っ越しを幾度かしたり
どこかにしまい込み
いつしか 忘れられて いきました
時は過ぎ
2021年
テレビでよく知られた鑑定番組を見ていて
ふと 思い出した!
自分も 古い物あった!
あの時の PA R KERの万年筆
何処へいったんだろう?
見つかりました
改めて 軸の刻印を読んでみると
ROYAL CARENGER ロイヤルチャレンジャーと打たれています
今 改めて検索してみると 1937年から1941年頃まで作られた
チャレンジャーシリーズの上級に位置するのだそうで
私の持っているのは その中でも
キャップの装飾が 通常の物と 異なる物のようです
今から80年前の万年筆!
PEN LAND さんという万年筆を販売修理をされているWEB SHOPでは
なんと 45000円のプライス! 税込み49500円!
あの日 見つけたとき
古い家具の引き出しに いろいろがらくた小物がはいっていて
その中から 発見したものでした
あの時からでも 30年以上
物との出会いの不思議
この万年筆は 次は 娘に託そうかな
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